花の星の創作BLOG

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薬師如来

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彼は

つねに、病に苦しむ人たちをみて
くるしみ、かなしんでいた

彼は倒れるまで
ひとたちを見続けた

彼の死後も その思いは消えなかった

倒れ朽ちた彼の肉体は
やがて草木が芽生え
そうして森になっていった

男にはひとりの娘がいた

娘は
奇妙な病をわずらっていた

月明かりの夜

遠い町まで
娘のことを調べに行った男は
ひどく疲れていた

泥のように重い足を
持ち上げる

目の前に、ふ、と
きれいな鳥が見えた
紫色の鳥だった

不思議なことに
鳥はわずかに煌めいて見えた

鳥は男を誘うように振り返りながら
いっぽ、いっぽ
生い茂る林へと向かう

男はなぜか胸があつくなって
鳥を追いかけた
無心だった
何も考えていなかった
きっと疲れすぎていたのに違いない

気が付くと
森の入り口

鳥は男に指し示すように
小さな茂みの草木をついばみ
口にはんだ

それは何の変哲もない草木だった

鳥はなにかを伝えるように
男を見つめていた
わからせるように
草木をもう一度
ついばんだ

その森の草花を
導かれるままに
男は手にとった

男の娘は
その奇妙な草を煎じて飲んだ

妙な話だったが
すこしずつ
病が平癒していったらしい…